大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和24年(行ナ)13号 判決

訴訟参加人

中村吉之助

原告

吉松善助

善明基

被告

福岡通商産業局長

主文

本件参加申出は却下する。

参加申出に関する訴訟費用は参加人の負担とする。

事実

参加代理人は原告等及び被告は参加人に対し被告が昭和十九年六月五日頃参加人の同十四年二月二十二日付福岡県糟谷郡志免村大字吉原地内面積七万三千三百坪の石炭試掘願を許可したことを確認せよ被告は右鉱業権設定の登録をせよとの判決を求めその理由として参加人は被告に対し前記試掘出願をしたところ被告は同年十月十二日付を以て不許可の処分をしたので参加人は行政裁判所に出訴し同事件は昭和十四年第一五〇号試掘出願不許可処分取消請求事件(以下別件と略称する)として係属したが同裁判所は審理の結果同十九年七月二十日参加人敗訴の判決をした、一方原告吉松善助外一名は参加人の出頭に遅れること約二十日同十四年三月十三日被告に対し前記出願と同一地域において石炭試掘出願をしたが同出願は同年四月十四日不許可の処分を受けたので行政裁判所に出訴し現に係争中であるしかるに参加人と被告との間に昭和十九年六月五日頃訴訟外において示談か成立し参加人の前記試掘出願が許可せられたが未登録のままであつた、かように参加人は訴訟外において主管庁たる被告から試掘出願を許可せられたのであるから後願者たる原告等の試掘出願は許可せらるべき余地はない尚別件の参加人敗訴の判決に対しては当裁判所に再審の訴を提起し(昭和二十四年(ム)第三号再審請求事件)当裁判所において敗訴の判決を受けたが目下上告準備中であつてその結果は未定であるから万一本訴において原告等が勝訴の判決を受けるときは参加人の右権利は害せられることとなるので民事訴訟法第七十一條前段により当事者として本訴の訴訟に参加申出をする次第であるというにある。

理由

あんずるに民事訴訟法第七十一條前段により当事者として参加の申出をなし得るためには訴訟の結果により参加人の権利が害せらるべきことを主張することを必要とすることは同條の規定するところである。しかるに参加人の本件試掘出願は昭和十四年十月十二日付を以て被告から不許可処分を受け更に之が取消を求めるため行政裁判所に出訴したるも同裁判所は審理の上昭和十九年七月二十日参加人の出類許可請求権がないとの理由で参加人敗訴の判決をしたことは参加人の自ら主張するところであるから仮に被告が右行政裁判所の判決前に不許可処分を撤回し参加人の出願を許可したとしても右判決は関係行政廳を拘束する結果右出願の許可はその効力を保有し得ないものである從つて参加人は現在本件出願地については試掘出願の許可請求権も又勿論試掘権も有つていないものといわなければならないもつとも参加人は右別件の敗訴の判決に対しては当裁判所に再審の訴を提起しこれまた敗訴の判決を受けたが上告準備中であるからその結果は未定であるというが再審の訴の提起があつてもその判決において原判決が取消される迄は原判決の確定力に何等影響を及ぼすものではないから参加人敗訴の別件判決が確定したものではないという参加人の主張はこれを採用することができない之を要するに参加人は本訴の訴訟の結果により害せらるべき権利を有つていることを主張して参加申出をなしたものということができない從つて参加人の参加申出はこれを不適法として却下すべきものとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條を適用し主文の樣に判決をする。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例